【アメリカ旅行記】NYジャズセッション、Smalls探訪記録

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NYには7日いましたが、Smallsには4回訪れました。

流石に、日本の(特に私が行けるような初心者OKセッション)とは恐ろしく違うな・・と思いました。

とにかく、日本とは異なる強い音とリズムを感じました。

Smallsのシステム

セット

1日にバンドが2つ出ます。

それぞれのバンドが2セットずつやります。

こんな感じです。

■19:30 ステージ1 バンドAのセット1

■21:00 ステージ2 バンドAのセット2

■22:30 ステージ3 バンドBのセット1

■0:00 ステージ4 バンドBのセット2(セッションタイム)

ステージ毎にチャージです。

ステージは入れ替え制ですが、ステージ3にいた場合、追加チャージなしでそのままステージ4も観れます。(ステージ3が終わって、このままいてもいいのか?と聞いたら、いいよ、との事)

で、肝心のセッションなのですが、ステージ4に行われます。ステージ4では最初にバンドBが軽く2、3曲やって、その後セッションタイムになります。

大体2:30くらいまでセッションが行われます。

チャージ、予約は?

チャージは1ステージ毎です。

Smallsのサイトから予約ができます。

■予約した場合

バンド、ステージ毎に料金が違います。大体25ドルから40ドルのようです。

座席指定はありません。満席で座れないということはないよ、という意味の予約です。

■予約しない場合

予約なしでいきなり行くことも可能です。

この場合、バンドにかかわらず25ドルのようです。

店に行く

■予約した場合

席は早いもの勝ちなので、良い席に座りたい場合は早めに行ったほうが良いでしょう。2、30分前には行きたいところです。

入り口で名前を告げるとチケットを渡してくれます。で中に入れてくれます。

チケット

中に入ったら、好みの席に座ります。前の方が良いでしょうね。

■予約していない場合

予約客が全員店に入った後に入ることになります。

なのでそれまで並んで待って、開演直前、5分前くらいに入ることになります。

並ぶ

満員ではない場合はチケットを渡してくれて、中に入れてくれます。

バンドにもよると思いますが、大体いつも満席に近いです。なので入れても、「あの空いてる椅子奥すぎて座れない」とか「そもそも椅子空いてないぞ」というようなことになります。そして一番後ろでステージがまともに見えないような場所で立って観る、ということになります。

こういうジャズクラブはそれもまた一興ですが、やはり予約して行ったほうが良いかと思います。

注文、会計をする

席に座ると、メニューを渡されます。

何か一杯は頼む必要があります。

仮にハウスブランドのウィスキーにしましょう。10ドルです。

カウンターで注文しましょう(もしくはウェイトレスを呼びましょう。クレカの決済端末を持っています)

予約なしで入った場合、チャージは25ドルですので、合計35ドルになります。

これに+チップが必要になります。チップは5ドルとすれば、40ドルでちょうどいい感じです。

結局、支払いは40ドルとなりました。

カウンターかホールのウェイトレスにチケットを渡して注文を伝えましょう。その場で決済です。

現金なら40ドル払って終わりです。

しかしクレカが楽でしょう。

クレカの場合、決済端末で決済することになります。

こんな感じの

ウェイトレスがこれを出してきますので、クレカを差します。

この端末に表示されている金額は35ドルです。チップ分がありません。

チップはどうするの?となりますが、決済操作を進めていくと画面に「10%」「15%」「20%」などというボタンが現れます。

これがチップを示しています。10%ボタンを押すと、3.5ドルがチップとして計上されます。

これで会計は終わりです。

もう一杯飲みたいな、という時は一杯分の料金で同じことをすればいいだけです。

最初に「何杯か飲むなら会計はまとめて最後にする?」などと聞かれる時もあります。そういうこともできるようです。

セッションの様子

・まず、うますぎる

みんなめちゃくちゃうまいです。楽器がもう鳴りまくっています。

リズムがうねっています。個々のプレイヤーが強力なリズムを持っています。プレイヤー同士、結構お互いずれたりするのですが、そのずれたり戻ったりとグイグイする感じが、強烈なドライブの秘密なのかなあと思いました。どうなんだろ。

初日に聴いた瞬間、ああ、これだ、これだったんだ・・と思いました。

・誰も譜面を見ない

これは驚きました。

いや、実際は4日見たうちで1回だけiRealを見ている人がいました。

でもそれも、パッと見ただけであとはピアノの上に放置でした。

あっなんか開いてるけどなんだかわからない!

・曲決め、演奏開始、が早い

曲がすぐ決まります。フロントがセッションメンバーに対してぼそっと曲名とキーを言うと、みんなボソボソ「OK」「OK」「OK」みたいな感じですぐ決まります。

「OK、キーは?」などというやりとりも当然あります。頭の中で移調できて当たり前なんだろうなという感じです。歌の人も結構参加してくるので尚更当然と言えます。(通常、歌の人は自身のキーの譜面を配ったりしますが、そういえばそんな事をしている人はいませんでした)

曲が決まるとピアノがすかさずイントロを出します。

ピアノのイントロのリズムの強靭さがすごいです。ああ・・こういうふうにやらなければならないんだな・・と思いました。

たまにフロントがいきなり曲を吹き出す場合もあります。みんな平然とついていきます。

4日も見ますと、毎日みるな、という人もそこそこいて、もう大体わかってる人たち同士なのかな、、とも思いましたが、それでも凄いです。

・セッションなのに普通に客がいる

平日の夜0時のセッションです。なのに客(とプレイヤー)で満員です。

ミュージシャン同士楽しむセッションであると同時に、客に見せるパフォーマンスなのです。だから前述のようにさくさく進めるのでしょう。

プレイが普通に圧倒的なので、客から歓声が飛びます。熱いです。

・やる曲

半分以上、知らない曲でした。スタンダードが日本とちょっと違うのかな。

もちろん枯葉など、こてこてのスタンダードもやっていました。

Chelsea Bridge、Alone Together、Never Let Me Goなんかもやっていたな・・

変に難しい曲をやったりはしていませんでした(Giant Steps、Humpty Dumpty みたいな)

シダー・ウォルトンの曲が多かったのが印象的でした。(Bolivia、Firm Rootsなど)

セッションへ参加

したのか?という話ですが・・

もちろん、できるものならやって見たいよなあ・・という気持ちでいました。

しかし、オーディエンスがいる熱いステージでのセッションです。

もちろんピアニストがいなければ、曲間に「ピアノやらせてくれ」と言いステージに出ていけば、やらせてはくれます。

しかし、曲を決める権利なんてありません。
言われた曲をやれなければなりません。
どんな曲、キーを言われるかわかりません。
呑気にiRealなど開いて、キーはなんでしたっけ?などと言っている雰囲気ではありません。
曲名とキーを言われたらすぐに、ピアノはガッとイントロを出す必要があります。
そもそも英語のリスニングが駄目という楽器以前の問題があります。
曲名が聞き取れません、など論外です。

とにかく課題が山積しています。
これでヘナらないわけがありません。
「あの日本人ダサかったな〜」となれば国辱ものです。

ただ、セッションタイムは0:00〜2:30くらいなのですが、さすがに2時近くになるとダレてきます。オーディエンスもかなり少なくなります。

私はそこに機があるのではと踏んでいました。

そして機がおとずれました。

曲間です。ピアノがいません。客席の人もかなり少なくなりました。
空気もダレて、さあ次の曲を始めよう、という雰囲気がありません。

この空気なら、「ちょっとピアノをやらせてほしい。簡単な曲しかできないのだけれども」で行けるかもと思いました。

言い出します「can I play ..」

と言った瞬間に、ピアノの人が横におりました。
次のピアノが決まっていたようです。
ホストに「彼が弾くからちょっと待って」というようなことを言われました。

残念なような、ホッとしたような、そんな気持ちでピアノ脇の長椅子に戻りました。

曲が終わるや否や、60代くらいの年配の紳士がスッとステージに入ってきました。何か歌いたいようです。
指示を出して、(多分曲名とキーを言って)歌い出しました。

そうか、歌か・・
ボーッと聞いていました。

なんていう曲かな・・あっ、なんだ。
これはアナザーユーではないか。
本場の人が歌うと、雰囲気も結構違うものだなあ・・

アナザーユーとはThere will be another you という曲で、ジャズセッションでは超定番曲です。

曲が分かった瞬間、ピアノを弾いている人がいいました「ヘイ、君プレイしろよ」
えっどうもありがとう!まじか!と思いました。

でも曲は知っているぞ。
しかしキーがわからん!
ピアノに座ります。
音を探ります。
オリジナルキーだ!(Eb)

しかし、私はアナザーユーのコードを覚えていなかったのです。(おい!)
事ここに至ってはやむなし、iRealを開きました。

弾きます。
ピアノの鍵盤がやけに重く感じます。
ペダルも、うわっ硬いやつだなこれは・・
コードを弾くと、む、こんな響きなのか、もっと強く弾かんといかんか・・?

・・・

Smallsで1曲やった、という実績だけはできました。

しかし、初めて触れるピアノの感触とステージの響きに戸惑っただけで終わりました。
何をどう弾いたか、全く覚えていません。
ロクな演奏ではなかったでしょう。

その日はこれが最後でセッションは終了しました。

ピアノ脇の長椅子に座って、ちょっとボーッとしてしまいました。

悔しいというか、大チャンスをドブに捨てた、そんな気持ちでした。
オリジナルキーのアナザーユーという幸運を前に、自分のプレイが全くできなかったのです。
上手い下手はどうでも良かったのです。(どうせ下手ですし)
自分のプレイかどうかなんです。
それが全く、できませんでした。
呆然としました。

店は閉める用意をしています。
みんな帰る支度をしています。
管楽器の人たちは楽器をケースにしまっています。
店内はまだガヤガヤしています。

特に誰か話しかけてくるわけでもありません。私もろくに英語ができないので話しかけることもできません。
なるべく目立たずと帰ろうとしました。

店を出ようししている途中、トロンボーンのプレイヤーが手を差し出してくれました。
握手してくれということです。

この人は歌の後にソロをとった人かな?・・とすれば私がバッキングをしたんだろうな・・と思いました。(そんなことも覚えてないくらいテンパっていました)

握手しました。
彼は「一緒にプレイしてくれてどうもありがとう」というようなことを言ってくれました。
おどおどしている東洋人に気を遣ってくれたのでしょう。

これは本当に嬉しかったです。
こちらもいいたいことは山ほどありましたが、英語が駄目です。「どうもありがとう」しか言えません。

店を後にしました。

とにかく情けない気持ちになりました。
しかしそれでも1曲やらせてくれと申し出て、実際にやったんだぞ、という勇気と実績は少なくとも自分自身で認めようと思いました。

また、あの時ピアノを弾けとを譲ってくれた人には本当に感謝しかありません。

・・・

しかし本当に悔しくて、リベンジしてやると思いました。
次の日もその次の日もSmallsに行きました。

とにかくセッションタイムは
・即座にステージに出れるようにピアノの近くに座る
・知っている曲(特に暗譜している曲)が始まるともし分かった場合、ピアノがいなければ即座に座る。
・ピアノいた場合でもそのピアノが何曲かやっている場合は「私に代わってくれないか」と頼む。
・ダレた雰囲気が出たら、「簡単な曲しかできないがピアノをやらせてくれないか」と申し出る。
というスタンスで臨みました。

しかし残念ながらリベンジの機会は訪れませんでした。

振り返って

当初の目的である「本場のジャズセッションを体感する」は十分に果たせました。というか結果はともかくセッションをやってしまったので目的以上の成果です。

百聞は一見にしかずです。演奏自体はもちろん、店の雰囲気、演者の立ち振る舞い、服装、やりとり、客の雰囲気、、全てが「ああ・・こんな感じなんだ・・」です。

音楽なんだから英語ができなくても関係ないと思っていましたが、曲名の聞き取りもあやしいなどとは、もうお話にならない、などその場にいてみて分かったことです。

とにかくスピードです。自分が普段いかにタラタラやっているか思い知りました。

練習の時も、今Smallsのピアノの前にいるというイメージで、例えばいきなり「酒バラ、Key Cで」と言われたらガッと弾く・・のようなイメージ練習をしないといけないな、など意識が変わりました。(まだ全然できないんですが・・)

セッションでよくやるスタンダードは暗譜するように心がけるようになりました。そうすると、今まで気にしてなかった曲の構造(度数と調)などが分かってきました。

覚えないとダメというより、曲の構造を理解すればどうしたって覚えてしまう(もしくはうろ覚えでも構造が大きく損なわなければ問題ない)ということなんだろう、というように考えが変わりました。

恥ずかしく情けない思いはしましたが、とても得難い、非常に有意義な経験をしました。

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